台湾旅行法がアメリカ議会を通過した話題を以前ご紹介していました。

http://higashi2005.dreamlog.jp/archives/52210292.html


予想通り中国が強烈に反対していましたが、今回トランプ大統領が法案に署名し、ついに法律が成立したようで、日本のメディアも関連ニュースを発信しています。

 【ワシントン=黒瀬悦成】米ホワイトハウスによるとトランプ大統領は16日、米国と台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目的とした超党派の「台湾旅行法案」に署名し、同法は成立した。


 同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官、行政機関職員など全ての地位の米政府当局者が台湾に渡航し、台湾側の同等の役職の者と会談することや、台湾高官が米国に入国し、国防総省や国務省を含む当局者と会談することを認めることを定めている。

 また、台湾の実質的な在米大使館である台北経済文化代表処などの台湾の組織や団体に米国内での経済活動を奨励する条項も盛り込まれている。米国は1979年の米台断交と台湾関係法の成立後、米台高官の相互訪問を自主的に制限してきた。台湾旅行法の成立で、トランプ大統領の訪台や蔡英文総統のワシントン訪問が理屈の上では可能になる。

 法案は1月9日に下院を通過し、2月28日に上院で全会一致で可決された。今月16日がトランプ氏が法案に署名するかどうかを決める期限となっていた。米国務省は、台湾旅行法が米台関係の変化を意味するものではないと説明しているが、台湾を不可分の領土とみなす中国が米台の接近に危機感を抱き、「一つの中国」原則に反するとの理由で猛反発してくるのは確実だ。(2018年3月17日 産経ニュース)



それでは台湾の「りんご日報」の論調を見てみましょう。

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中国共産党の習近平総書記は昨日の全国人大会議で満場一致で国家主席、中央軍事委員会主任に選出され、「三位一体の最高リーダー」として第2期目に突入しました。トランプ大統領がこの法案に一昨日サインしたことは、習近平が皇帝の座につく日に合わせて中国の顔に泥を塗ったものに違いない。

台湾の蔡英文総統は早速トランプ大統領のサインに対する謝意を投稿しています。最後に付けられた中華民国の国旗とアメリカ国旗が、他人事ながら嬉しいですね。


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今回成立した法律は拘束力がなく、行政部門が実際にどう行動するかを見る必要があります。アメリカの「台協会」の新しい内湖の事務所が6月に落成する予定であり、その時のアメリカ官僚が出席するかどうかでアメリカ政府の立場が見て取れそうです。

台湾の総統府の今回のサインに対する見方としては、「台美外交走出一大步(台湾とアメリカの外交上の大きな一歩)」と見るものの、「但美國行政單位恐不會那麼快讓台灣總統到華府訪問(但しアメリカの行政部門は恐らく台湾総統のワシントン訪問を早期に受け入れるわけではないだろう)」と見ています。

台湾とアメリカ政府関係者の相互往来で、やはり台湾側の最大の目標は「台湾総統のワシントン訪問」ですよね。歴代の台湾総統の経緯を「りんご日報」は以下の通り整理しています。

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李登輝:
1994年:ハワイ
飛行機が給油の為に寄港。飛行場内の休憩室にしか入れないので、飛行機から降りることを拒否。
1995年:ロス・シラキューズ
私人の立場で入国。コーネル大学の同窓会活動に参加し、公開演説


陳水扁:
2001年:ニューヨーク・ヒューストン:
ホテルが華僑の宴会を企画。メトロポリタン博物館、ニューヨーク証券取引所も参加して、先例を作る。
2003年:ニュヨーク・アラスカ
人権賞の受賞と演説
2007年:アラスカ
50分間の給油での滞在しか認められず、抗議で飛行機から降りなかった。

馬英九:
2008年:ロス・サンフランシスコ
ホテルで華僑を招いて宴席
2006年:ヒューストン、ロス
台プラの工場参観、先導車がつき、高速道を閉鎖して交通管制

蔡英文:
2016年:マイアミ・ロス
マイアミ港の参観、パトカーが全行程警備
2017年:ヒューストン・サンフランシスコ
警察が全行程交通管制、美術館参観
2017年:ハワイ・グアム
学者との会談、パールハーバー参観、グアム総統官邸訪問



以上を見る限り、中国の圧力もあり、台湾総統がアメリカを訪問するのは難しく、給油であったり、私人であったりと、色んな理屈をつけながら、少しずつ実績を積み重ねながらアメリカの土を踏む努力して来ていたのがわかります。

敏感な問題なので、以前はコソコソと隠密行動でありましたが、昨年の蔡総統のハワイ・グアム訪問では、正々堂々と全行程が発表され、各地での総統の活動が同時進行で配信されたのには、新しい時代の幕開けを感じたものでした。




そして今回のアメリカ側の制限の撤廃ですから、次なる一歩に大いに期待したいですね。


目指せワシントン、加油台湾!